Японский перевод М. Тацуя
Источник: : 森安達也 訳『イーゴリ遠征物語: 悲劇のロシア英雄伝』 (世界の英雄伝説 (3)), 筑摩書房: 1987. "Игори эйсэй моногатари: хигэки-но росиа эйю дэн" ("Повесть о походе Игоревом: трагическое предание о русском герое"), пер. Мориясу Тацуя. "Сэкай-но эйю дэнсэцу" ("Героические предания в мировой литературе"), т. 3. Тикума сёбо: 1987.
- 1. 199 花ばなは 愁[うれ]いにしおれ
木は悲しんで
大地に低く 枝を垂れた。 - 2. さはあれ われら この歌をば
いまの世の 事実[まこと]のままに 始めよう
ボヤーンの ひそみには 倣[なら]わずに。 - 3. 神人ボヤーン
ひとの祝歌[ほぎうた] つくろうとすれば
想いは木ぎを伝い
灰色狼のごと 地を奔[はし]り
鳩色の 鷲かとばかり 雲の下を飛んだ。 - 4. みずからいわく――
ありし日の 合戦のさま 傯[しの]びつつ
十羽[とわ]の鷹 白鳥の 群れに放てば
その鷹の 捉[とら]えし白鳥
真先かけて 祝歌[ほぎうた]うたった。 - 5. ありようは はらからよ
ボヤーン 十羽の鷹を
白鳥の 群れに放った
とは寓言[そらごと]
神通力ある その指を
いのちある 弦[げん]に触れるや
弦おのずから 鳴り出でて
侯たちの ほまれを奏[かな]でたのだ
そのかみの ヤロスラーフの
また 力ソークの 軍兵どもの 面前で
かのレデージャをば 討ち取ったる
いさましき ムスチスラーフの
あるはまた スヴャトスラーフの子
美丈夫[びじょうふ] ロマーンのほまれを。 - 6. はらからよ では始めよう
そのかみの ヴラジーミルから
剛胆 よくおのが知恵をためし
勇武 よくおのが心を研[と]いだ
いまの世の イーゴリまでの
この物語。 - 7. かのイーゴリこそ 雄心[ゆうしん]勃勃[ぼつぼつ]
ロシヤの 国のため
いさましき つわものどもを 引き具して
ポーロヴェツの地に 攻め入ったのだ。 - 8. そのとき イーゴリ
天照[あまて]る日影 うち仰ぎ
そこより発する 暗闇
全軍を 押し包んだを見た。 - 9. して イーゴリ
従士らに 告ぐるよう。 - 20. 《ただひとりなる わがはらから
ただひとつなる わが明るき光
汝[なんじ] イーゴリ。
われらは ふたりながら
スヴャ卜スラーフの 血を承[う]けし子ぞ! - 21. はらからよ 駿馬に鞍置け!
- 22. わが馬は はやクルスクの
ほとりにて 鞍置かれたり。 - 23. して わがクルスクの 郎党は
音に聞こえた つわものぞろい
喇叭[らつば]の下にて 襁褓[むつき]につつまれ
兜の下の 揺り籠に眠り
槍の穂先で 物食らわされた者ども。 - 24. いずこの道 いずちの谷とて
知らぬ隈[くま]なく
弓を張り 矢筒をひらき
刀[かたな]を研[と]いで 出陣を待つ。
野を馳せ巡る ありさまは
灰色狼に 異ならず。
われこそは おのが名を挙げ
君のほまれを 輝かさんと
競[きお]い立つ》 - 26. かくてぞ イーゴリ侯
黄金[こがね]の鎧[あぶみ]に 諸足[もろあし]かけ
広野[ひろの]をのぞんで 馬を進めた。 - 27. 天日[てんじつ]は暗く翳[かげ]って
侯の行く手を 遮[さえぎ]りかくす。 - 28. 夜は雷[いかずち]を とどろかせて
群鳥[むらとり]の 眠りを覚まし
けものらは 鋭く啼[な]いて
立つ鳥を 百また百と 追い集める。 - 29. ジフは梢[こずえ]より呼ばわって
名も知らぬ国へと 合図を送る――
ヴォルガの流れ
アゾフのほとり
スーラの岸辺
スーロシュ
コルスン
さてはまた 汝[なんじ]へ
トムトロカーンの 神像よ……。 - 30. して ポーロヴェツの 軍勢は
道なき道を 急ぎつつ
大ドン指して ひきしりぞく。
《イーゴリ勢 ドンに到[いた]る!》
兵車の叫びは 深夜に谺[こどま]し
さながら飛び立つ 白鳥の
羽音のよう。 - 31. 鳥ははやくも
殃[かざわ]いに 先駆けて
雲の下に かくれがを求め
狼は 谷間に吼[ほ]えて
雷[いかずち]を呼び
鷲はしきりに啼[な]いて
けものを餌食[えじき]に 呼び招き
狐の群れは ロシヤの勢の
真紅の盾に 吼えかかる。 - 32. ああ ロシヤ
汝[なれ]ははや 丘のあなた! - 33. 夕映えの 光は空に たゆたいつつ
夜に入って いつしか消ぇた。 - 34. しののめの 光が空を 燃やすころ
野面[のもせ]は霧に 包まれた - 35. 篤の 囀[さえず]りも いまはまどろみ
小鴉[こがらす]の ざわめきを 呼び覚ます。 - 36. ロシヤの子らは
おのが名を挙げ
君のほまれを 輝かさんと
ひろき野に 真紅の盾を立て巡[めぐ]らす。 - 37. その金曜の 朝まだき
ロシヤの子らは ポーロヴェツの
邪教の勢を 蹴散らして
矢とばかり 野に散って
分捕[ぶんど]ったは
ポーロヴェツのうまし乙女[おとめ]子[ご]
さてはまた 黄金[こがね] 練り絹
値[あたい]とうとき 絹のピロード。 - 38. 母衣[ほろ]合羽[かつぱ] 裘[かわごろも]など
ありとある ポーロヴェツの衣裳をば
沼地や沢へ 投げ入れて
衣裳の橋を 架[か]け渡す。 - 39. 紅[くれない]の旗 白妙[しろたえ]の幟[のぼり]
緋色[ひいろ]の旌旄[せいぼう] 銀[しろがね]の柄は
いさましき スヴャトスラーフの子に! - 40. オレークの 巣に生い立てる
たけき族[うから]は 野に眠る。
げに遥[はる]けくも 来つるものかな。 - 41. まことや この族[うから]
世に生まれたは
鷹 隼[はやぶさ]の
ましてや 汝[なんじ]黒鴉[くろがらす]
邪教徒の ポーロヴェツの
餌食[えじき]となろう ためではなかった! - 42. グザーは 灰色狼のごと
野を奔[はし]り
コンチャーク 先導つとめつつ
もろともに 大ドン指して
退[ひ]いてゆく。 - 43. その明くる日の 朝まだき
血の色の 朝焼けは
夜明けを 告ぐる。 - 44. 黒雲は 海より迫って
四[よ]つの日を 吞まんとし
そが中に 青き稲妻
しきりにきらめく。 - 45. やがて大いなる 雷[いかずち]はとどろき渡り
大ドンの かなたより
雨は矢となって 降りそそごう。 - 46. ここにこそ
ポーロヴェツの 兜[かぶと]にあたって
槍は折れ 太刀は毀[こぼ]れよう
大ドンに 遠からぬ
ここ カヤーラの 河のほとりに。 - 47. ああ ロシヤ
汝[なれ]ははや 丘のあなた! - 48. 見よ
ストリボークの 裔[すえ]なる風は
海より起こり 矢となって
いさましき イーゴリ勢の 面[おもて]を吹く。 - 49. 地はとよみ 河は濁り流れ
塵煙は 野をおおう。
《ポーロヴヱツの 勢到[いた]る - 50. ドンより海より 寄せ来たる!》
告ぐる軍旗の 声しきり。 - 51. 敵はあなたより こなたより
ロシヤの勢を ひしと囲んだ。 - 52. 悪魔の子らが
鬨[とき]をつくって 野を塞[ふさ]げば
いさましき ロシヤの子らは
真紅の盾を
野に隙間なく 立て巡[めぐ]らす。 - 53. 不退転の 意気すさまじき
汝[なんじ]荒れ牛 フセーヴォロト!
汝の矢は 敵陣めがけて
雨とそそぎ
汝[な]がフランクのつるぎは
敵の兜にあたって
戛然[かつぜん]たる 響きを発す。 - 54. 黄金[こがね]の兜 きらめかせつつ
かの荒れ牛の 馳せ過ぐるあと
邪教のともがら ポーロヴヱツの
首級[しるし]は積んで 山をなす。 - 55. 百錬の 太刀のまえには
アヴァールの 兜もなじかたまるべき
ふたつとなって 砕け散る
さても目覚ましい 汝[なんじ]のはたらき
荒れ牛 フセーヴォロト! - 56. いとしのはらからよ
フセーヴォロトは
ここを先途[せんど]と 斬り立てた
名誉も 富も
ふるさとの チェルニーゴフも
黄金[こがね]なす 父祖の御座[みくら]も
いとしの后[きさき]
うるわしの グレーボヴナの
閨[ねや]の情けも 忘れつつ。 - 57. トロヤーンの 戦いは
遠い昔の物語。
ヤロスラーフの 御代[みよ]も過ぎ
かのオレークの
スヴャトスラーフの子 オレークの
いくさもいまは 語り草。 - 58. このオレークこそ その昔
一剣もって 風雲を呼び
全地に矢の雨 降らせたる者。 - 59. この侯 出陣の砌[みぎり]は
かならず トムトロカーンの
町で黄金[こがね]の 鎧[あぶみ]を踏んだ。 - 60. 同じその音を いにしえの
大ヤロスラーフも 心して聞き - 61. また フセーヴォロトの子
ヴラジーミルも
チェルニーゴフで
朝来るごとに 耳をおおった。 - 62. 傲[おご]りゆえ
神の審判[さばき]を 蒙[こうむ]ったは
ヴャチェスラーフの子 ボリース。
若くいさましき オレーク侯をば
辱[はずか]しめた その報いに
経帷子[きょうかたびら]に 包まれて
曠野[こうや]の青草に 身を横たえた。 - 63. その同じ 青草から
スヴャトポルクは
二頭の マジャール馬の
間[あいだ]に載せて 看取[みと]りつつ
亡き父を キエフなる
聖[セント]ソフィヤの 御堂[みどう]へはこんだ。 - 64. このとき ゴリスラーヴァの子
オレークの代に 国の乱れの
種は播[ま]かれて 芽を吹き
ダージボークの 裔[すえ]ばる民の
財宝[たから]泯[ほろび]ぴ
侯たちの 争いに
民の命は縮まった。 - 65. このとき ロシヤの国は
農夫らの かたみに呼び合う
声もまばら
屍[しかばね]分かつ 大鴉[おおがらす]
珍味に飽かんと 逸りつつ
飛び立たんとする 小鴉の
声のみ喧[かまびす]しかった - 66. これぞげに ありし世の
合戦のさま 遠征のさま。
さもあらばあれ この度[たび]の
合戦こそ 前代未聞。
夜明けより 日の暮れまで
日の暮れより 暁[あかつき]まで
鋼[はがね]の征矢[そや]は 霰[あられ]と飛び交い
兜打つ 太刀の音
フランクの 槍の音
瞬時もやまず 野をとよもす。 - 67. ここポーロヴェツの 地の奥深く
名も知らぬ野に
ひづめにかかって 大地は黒ずみ
骨を播[ま]かれて 血潮にうるおい
その骨やがて ロシヤあまねく
哀傷の芽を 吹き出した。 - 68. 聞け
あのどよめきは なんの音?
あの鈴の音[ね]は なんの音? - 69. この朝まだき
イーゴリは 味方の勢を
いくさの庭に 呼び返す
いとしの弟 フセーヴォロトを
見殺しに するに忍びず。 - 70. 戦うこと 一日[ひとひ]
戦うこと 二日[ふたひ]
三日目の 真昼近くに
イーゴリの旗は ついに倒れた。 - 71. 流れも早き カヤーラの岸
はらからは 袂[たもと]を別[わか]った。 - 72. 血潮の酒も いまは尽き
- 73. いさましき ロシヤの子らは
婚礼の 宴[うたげ]を閉じた。
縁者らを 酒に飽かせて
みずからは ロシヤがため
屍[かばね]となって 野に伏した。 - 74. 草は嘆いて
打ちしおれ
木は悲しんで
大地に低く 枝を垂[た]れた。 - 75. げに はらからよ
はや哀傷の ときは来た。
はや武者どもは 曠野に沈み - 76. ダージボークの 裔[すえ]なる民の
軍勢の ただ中に
《よこしま》が 現われたのだ。
その《よこしま》は
乙女となって
トロヤーンの 地を侵[おか]し
ドン近き 青海に
白鳥の翼 はためかせ――
乱れはらむ世を 呼び覚ましたのだ。 - 77. 邪教徒ばらとの 戦いに
侯たちの 獲[え]たる勝利も
いまは夢。
兄弟たがいに
《こは わがもの
これも わがもの》
と ひしめき合い
侯たちは
小事を目して 《これぞ大事》と
声荒らげ
やがてわが身に 返るべき
諍[いさか]いの 種を播[ま]く。 - 78. 勝ち誇る 邪教の勢は
得たりや応と 四方より
ロシヤの国に 攻めかかる。 - 79. ああ! 遥[はる]けくも 鷹は飛びしよ
群鳥[むらとり]を屠[ほふ]りつつ――
かの海指して。 - 80. イーゴリの いさましき つわものどもを
よみがえらせる すべはない。 - 81. 泣き女[おんな]らは つわものどもの
あとを慕って 泣き叫び
慟哭[なげき]の声は
ロシヤ全土を 馳せ巡[めぐ]る。 - 82. ロシヤの国の 女らは
火の角[つの]の燠[おき] 煽[あお]りつつ - 83. 《いまははや いとしの夫[つま]を
心に思いやることも
わが胸に 浮かべることも
まのあたり 打ち見ることも
ましてや黄金[こがね] 銀[しろがね]を
手に取ることも
叶[かな]わぬ仕儀と なったぞや》
と 涙ながらに かきくどく。 - 84. はらからよ 聞け
キエフの都は 悲しみに呻[うめ]き
チェルニーゴフは 殃[わざわ]いに泣く。 - 85. 憂いはロシヤの 地を浸し
骨を刺す 悲しみは
ロシヤの最中[もなか]に 流れ入る。 - 86. 侯たち 内輪の争いに
憂き身をやつす そのひまに - 87. 勝ち誇る 邪教の勢は
ロシヤの国に 攻め入って
家ごとに 一匹の 栗鼠[りす]の値を
貢[みつぎ]の科[しろ]に取り立てる。 - 88. ロシヤの寇[あだ]の 勢いを
早くも盛り返させたるは
たれあろう かのスヴャトスラーフの
雄雄しきふたりの 忘れ形見[かたみ]
イーゴリ フセーヴォロト。
あわれ この両侯が
父とも頼む キエフの都の
厳[いか]しき大君 スヴャトスラーフ――
この侯こそ 雷[いかずち]のごとき 勢威もて
いったんは その寇[あだ]を とり拉[ひし]ぎ
戦[おのの]かしめ給いしものを。 - 89. げにやこの侯 一騎当千の
つわものどもを 引き具して
フランクのつるぎ ふりかざし
ポーロヴェツの 地を襲い
丘をも谷をも 馬蹄にかけ
河 湖を 隈なく濁し
早瀬 沼地を ことごとく千し
神を信ぜぬ コビャークをば
海の入江の ほとりなる
ポーロヴェツの 大いなる 鉄の陣より
旋風[つむじ]のごとく 引っ立て給えば
さしものコビャーク
キエフなる
スヴャトスラーフの います館[やかた]の
広間にどうと くずおれたのだ。 - 90. さればドイツ人[びと]
ヴェネツィヤ人
またギリシャ人
モラヴィヤ人
諸声[もろごえ]に スヴャトスラーフの
祝歌[ほぎうた]うたい
ありあまる 財宝[たから]をば
カヤーラの 底に沈めた
イーゴリ侯を 謗[そし]ってやまぬ。
理[ことわり]かな ポーロヴェツの
河また河は
ロシヤの黄金[こがね]に うずまるばかり。 - 91. かくて イーゴリ侯
黄金[こがね]の鞍を 乗りすてて
囚[とらわ]れ人[びと]の 鞍に身を置く。 - 92. 町の胸壁[はざま]は
悵然[ちょうぜん]として 声を吞み
よろこびは 首[こうべ]を垂れた。 - 93. 折りしもあれ スヴャトスラーフ
一夜[ひとよ] 怪[あや]しの夢を見給う。
さて宜[のたま]うよう―― - 94. 《昨夜[よんべ] キエフの丘の上で
まだ宵のうちに 誰やらん
櫟[いちい]の床[とこ]に 予を寝かせ
墨染めの経帷子[きょうかたびら]を 着せてからに - 95. 苦みのまじった 青い酒をば
しきりに汲んで 予に差しおった。 - 96. して 神を信ぜぬ ペチェネークらが
用いるという
矢を抜いた 矢筒の中から
大粒の 真珠の珠を
さらさらと 予の胸にあけ - 97. さて ねんごろに
予をいたわるのだ。
金色[こんじき]の 光まばゆい
わが高殿[たかどの]の 垂木を見れば
はや親梁[おやばり]が 失せておった。 - 98. 宵のうちから 夜もすがら
黒い鴉[からす]が 啼きつづけ - 99. プレセンスクに ほど遠からぬ
山のふもとに 荷橇[にぞり]が一台
現われ出たと 思う間もなく
青海さして 曳[ひ]かれて行ったわ》 - 200. 聞こゆるは 鵲[かささぎ]の啼[な]く声ならず
グザーと
コンチャークと
イーゴリのあと 慕いつつ
かなたこなたへ 馬を駆る音。 - 201. このとき 大鴉[おおがらす]は啼[な]かず
小鴉も 鳴りを静め
鵲[かささぎ]もまた 囀[さえず]りを止[と]めた。 - 202. ただ啄木鳥[きつつき]のみ
柳の枝を 伝いつつ――
啄[くちばし]の音 高らかに
河に到[いた]る 道をば教え
鶯は 愉[たの]しげに歌って
夜明けを告げる。 - 203. グザー コンチャークに言うよう。
- 204. 《かの鷹 もし
巣を指して 飛ぶならば
われら 黄金[こがね]の 矢をもって
鷹の子を 射殺そうぞ》 - 205. コンチャーク グザーに言うよう。
- 206. 《かの鷹 もし
巣を指して 飛ぶならば
われら みめうるわしき 乙女をもって
鷹の子を 繫[つな]ぎとめよう》 - 207. グザー コンチャ—クに言うよう。
- 208. 《われら もし
みめうるわしき 乙女をもって
鷹の子を 繫ぎとめなば
鷹の子は 乙女もろとも
われらを遁[のが]れ
やがてわれらが 群鳥[むらとり]は
ポーロヴェツの 野に討たれよう》 - 209. 遠い昔の――
ヤロスラーフの
オレークの
国の初めの 侯[きみ]たちの
伶人[うたびと]ボヤーン
スヴャトスラーフの 子の上も
預言して かくは歌った。 - 210. 《肩のなき 首は辛[つら]し。
されど首なき 躯[むくろ]こそ
悲惨のきわみ》――
これぞ イーゴリなき
ロシヤの国。 - 211. 空高く 照る日のもと
イーゴリ侯
いまぞロシヤの 国にあり! - 212. 乙女らが ドナウの岸に
うたう歌声 その歌声は
海を越え
キエフをとよもす。 - 213. イーゴリは 《塔》の聖母の
御堂[みどう]を指して 馬上ゆたかに
ボリーチェフ坂を くだりゆく。 - 214. 国ぐには よろこび祝い
町まちは 笑いさざめく。 - 215. そのかみの 侯たちの
祝歌[ほぎうた]を うたったからは
年若き 侯たちにも
祝歌を 捧げまつろう。 - 216. スヴャトスラーフの子 イーゴリに
荒れ牛 フセーヴォロトに
イーゴリの子 ヴラジーミルに
ほまれあれ! - 217. キリストの み教え守る
国民[くにたみ]のため
異教徒の 勢と戦う
侯たち 従士ら
すこやかにませ! - 218. 侯たちに ほまれあれ!
従士らに 武敷[いさおし]あれ!
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Орехов Б. В. Параллельный корпус переводов «Слова о полку Игореве»: итоги и перспективы // Национальный корпус русского языка: 2006—2008. Новые результаты и перспективы. — СПб.: Нестор-История, 2009. — С. 462—473.